WASABIな暮らし便り

NychairX(ニーチェア)

自宅のリビング用に新しく椅子を手に入れました。
その名もNychairX(ニーチェア)。
スチールのフレームに帆布を張って、木のアームレストのある深く座れる一人掛けの椅子です。
リビングでゆったりくつろぐときに座ります。

肌に触れる部分が帆布だけなので、とても柔らかくソフトな座り心地です。深く腰掛けて、背もたれも斜めなので、どこかデッキチェアに座っているような、くつろげる感覚になります。

とても特徴的なのが、座面の高さ。すごく低くて、感覚の鋭い人なら「この椅子をデザインした人は、畳の上で床座で暮らしていた人だろうな」とピンとくるはずです。デザイナーの新居猛さんは、徳島の剣道具製造業の三代目として生まれたとのこと。

座り心地がよく、手頃な値段で役立つ「カレーライスのような」椅子を目指したそうです。 高さが低いので、こどもも上がりやすく、5歳と2歳の子どもが気持ちよさそうに座ったり、寝ころんだりできるのが印象的です。

アームレストの部分も、本物の木でできていて、とても握りやすくやさしい肌触りです。スチールと帆布と木の素材のよさを活かしたシンプルなデザインは、日本文化のよさが自然に出ています。1970年の発売とのことなので、もう50年ほど前のデザインなんですね。全く古びていないので、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の永久コレクションに入っているのもうなずけます。

リビングに置くと、椅子のまわりの空気が優しく品がいい、そんな雰囲気に変わります。やっぱりいいデザインのものはいいし、そういうものに囲まれて暮らすのは大事なことだなと、改めて感じました。それでいて、3万円台で手に入れることができる、本当にカレーライスのような椅子ですね。

使わないときは、写真のようにたたんで、片付けるのも簡単です。要るときに出して、不要なときに仕舞う、和室の文化の考えが生きているような気がするのは考えすぎでしょうか。ちなみに、スチールの脚は、畳などの床が痛まないようにデザインされているそうです。

座面と背もたれに使われているのは倉敷帆布とのこと。「帆布」は文字通り、もともとは船の帆として使われていたもの。昔は木造の帆船が主な交通手段だったので、そのために使われた丈夫な布です。今では倉敷帆布というと、バッグやエプロンなどが思い浮かびますが、そうやって使用用途を変えて、生き残っているんですね。ちなみに、帆布の7割が倉敷で生産されているのは、岡山平野の干拓地は塩分の多い土地で綿花の生産に適していたので、綿をつかった帆布の生産が歴史的に盛んだからなんですね。

素材をいかしたシンプルなデザインで、飽きがこない長く使えるお求めやすい椅子。そんなカレーライスのような椅子はいかがですか。今は失われつつある日本文化のよさも、そこはかとなく感じられます。